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1.認知症対策としての信託(福祉型信託)

厚生労働省の推計では、65歳以上の高齢者のうち、認知症の人は15%、2012年時点で約439万人に上り、認知症になる可能性がある軽度認知障がいの高齢者まで含めると、実に4人に1人が認知症とその予備軍ということになります。  
認知症が発症し、進行すると自分の行為を認知する機能が低下するため、財産や通帳の置き場所を忘れてしまったり、高齢者を狙った財産詐欺や悪徳商法などの消費者被害を受け、大切な老後の生活資金を失ってしまう危険性が高まります。
他方、2013年に内閣府が行った調査によると、65歳以上の高齢者のうち、ひとり暮らし、または夫婦のみで生活している世帯は56.2%に上り、今後も増加傾向にあるといわれています。加速する少子・高齢化社会において、子による扶養は期待できず、高齢者は自力で老後の生活を守っていかなければならないというのが現状です。
そこで、大切な財産を守り、いかに管理していくか(財産管理)、介護サービスや入所施設はどうするか(身上監護)といった問題を早期に解決しておくことは、豊かで安全な生活基盤を確保し、自分らしく老後を過ごす上で重要な課題となります。


 成年後見制度の限界

判断能力が減退した場合の本人支援制度として、成年後見制度がその主導的な役割を担ってきました。 しかし、この後見制度は、手続きの猥雑さに加え、使える場面・対象が限定されており、高齢者の財産管理・財産承継ツールとしての汎用性は低く、下記のような限界があります。
① 成年後見制度は、判断能力が低下しないと効力は発生せず、また本人の死亡により終了するため、生前から死後まで長期的な視野に立った対策としては不十分。
② 判断能力の減退を補完する制度であるが故、判断能力が十分にある身体障がい者や、判断能力に問題のない高齢者は利用することができない。
③ 任意後見の場合には、後見人に取消権がないため、本人が不必要なものをたくさん購入したり、財産詐欺や悪徳商法など不利益な契約を結んでしまった場合には、本人を保護することができない。
④ あくまでも本人の財産管理・権利擁護を目的とする制度である以上、相続対策や積極的な資産運用(例えば、生前贈与や不動産の買替え、収益不動産の建設、株式・投資信託等の金融商品の購入、生命保険契約の締結など)は否定される。
そこで、成年後見に代わる機能として、ないしはこれを補完する制度として、民事信託の活用が考えられます。


 第三の後見制度―福祉型信託のメリット―

民事信託、とりわけ高齢者や障がい者等の生活支援を主旨とする信託スキームは「福祉型信託」と呼ばれ、超高齢化社会に即応する新たな社会インフラとして、あるいは第3の後見制度として活用が期待される財産管理ツールです。
民事信託の効力信託では、後見制度のように始期や終期の縛りはなく、設定後すぐに効力を発生させることができ、委託者が判断能力のあるうちに金銭の管理方法や利用範囲を信託目的として設定しておけば、その後判断能力が低下しても、ご自身の希望に沿った財産管理を継続させることができます。
そのメリットとしては次のようなものが挙げられます。

判断能力がある間に財産管理・承継方法を決定することができる (自己決定権の尊重)

② 生前から死後まで長期的スパーンで効果が期待でき、ここから 判断能力低下後の財産管理はもとより、本人死亡後に残された高齢の配偶者や特別な配慮を要する子の生活保障までワンストップで達成可能となる

③ 信託財産はその独立性が担保されているため、例え 本人が財産詐欺や悪徳商法などの被害に遭っても、その影響を受けることなく、財産の減少を防ぐことができる

④ 民事信託では、通常の相続とは異なり、 財産の受け渡し方法が指定できるので、死後の生存配偶者や障がいのある子、浪費癖のある子等の生活保障として活用する場合に、毎月一定の額を生活費として給付する旨定めておけば、 浪費のリスクを回避でき、継続的に安定した生活保障が可能となる

⑤ 信託目的の範囲内で、 積極的な資産運用ができる


 成年後見制度との併用活用

もっとも、民事信託は財産管理に特化した制度であるため、後見制度のような身上監護に関する機能はありません。この点、信託契約に身上監護に配慮した条項を盛り込むこと自体は可能ですが、受託者に、受益者に定期的に給付する金銭をどのように生活に充てるか、についての援助まで求めることは、負担が大きく、実質的に困難です。
そこで、従来の後見制度を活用し、信託スキームと組み合わせれば、相互補完的に、かつきめ細やかなサポート体制を構築することが可能となります。

両制度を併用活用することのメリットとしては
① 身上監護面は後見人が、財産管理面は受託者が主導的な役割を担うことで、業務を分掌でき、かつ後見人は身上監護に専念できるので、業務の負担を軽減することができる。

② 後見人による恣意的な財産管理を抑制することができる。 被保佐人や被補助人は一部判断能力が残っているため、本人自身による財産処分の可能性があり、資産を浪費してしまう危険性があるが、信託を活用して一部の財産を隔離すれば、本人による財産の減少を最小限に食い止めることができる。

などが考えられます。 (成年後見制度の詳細についてはこちら)


 後見制度との併用活用例 認知症対策としての信託

Aさん一家【Aさんの想い】
妻に先立たれ、子C,Dは既に独立して家庭を持っている。
将来認知症を発症した場合には、子どもに迷惑がかからないよう自宅を売却して、その資金で有料老人ホームへ入所したい。自分の死後は何かと世話を焼いてくれた長男Cに多めに財産を残したい。


解決策委託者兼受益者をA,受託者を長男C,受益者代理人を司法書士E,信託財産を自宅不動産と預貯金の一部として、信託契約を設定し、生活費・入院費・施設利用料など必要に応じて給付を受け取れる仕組みを作ります。
上記信託契約と並行して、任意後見契約も締結。司法書士Eを任意後見人として指定すれば、身上監護と連動した財産管理が可能となります。

認知症対策としての民事信託の仕組み

【受益者代理人】

受益者代理人とは、受益者が認知症等により意思表示をすることが出来なくなった場合に、受益者に代わって権利行使をする者をいいます。受益者代理人を設置することで、受益者の権利保護が図られ、受託者の権限濫用を抑止する効果が得られます。

【税 務】

信託設定時:課税されません。
信託終了時:残余財産の帰属権利者(CとD)に相続税が課税されます。

【信託設定の留意点】

・将来Aが老人ホームへ入所するため自宅を売却する必要が生じた場合には、その手続きをCが行う旨、契約書に明記する。
・信託期間をAが死亡するまで、信託終了後の残余財産の帰属先をC2/3,D1/3と指定しておけば、遺言の代わりになる。
・特定の者に多く財産を残す場合には、他の相続人の遺留分に配慮する必要がある。
・受益者代理人Eの権限は、Aが認知症発症後に発動するよう明記する。
●残余財産 信託が終了した時点で残っている信託財産のこと。残余財産を受け取ることができる者を帰属権利者といいます。帰属権利者が指定されていない場合、または指定された者が既に死亡していたり、その権利を放棄した場合には、残余財産は委託者、もしくはその相続人に復帰することになります。


ここがポイント! 信託を活用すれば、不動産の売却もスムーズ!
後見制度だと、自宅不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となりますが、その要件は厳しく許可を得ることは困難です。仮に許可が下りたとしても、売却スケジュールが大幅にズレてしまう可能性があります。 この点、信託だと受託者に売却権限がある旨明記されているので、裁判所の許可を必要とせず、スムーズに売却手続きを進めることができます。
ここがポイント! 設定次第で、遺言の代わりになる
後見制度は、本人の死亡により終了するため、死後の財産承継まではカバーすることが出来ず、別途遺言書を作成する必要があります。これに対し、信託では、設定時に死後の財産承継者を指定しておけば(例えば、第2受益者として子Cを指定しておく、ないしは本件のように残余財産の帰属先として子C,Dを指定しておく)、遺言の代用となり、認知症対策と同時に相続対策までワンストップで達成でき、手続きを簡略化させることができます。

 任意後見制度と民事信託の相違点

両制度ともに、本人の自己決定権を尊重した制度ではありますが、下記のような相違点があります。

(1)効力発生時期と継続期間
効力発生時期民事信託:契約と同時に効力を発生させることができ、設定次第では死後の財産管理・財産承継まで効力を継続させることができます。
任意後見制度:本人の判断能力低下後、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されて初めて効力が発生し、本人の死亡と同時に終了します。そのため、生前から死後まで長期的に効力を継続させる場合には、任意後見制度とともに、任意代理契約や死後事務委任契約等を締結する必要があります。


(2)信託の受託者と任意後見人との権限比較

民事信託の受託者 任意後見人
権  限 信託の定めに従い、信託財産を管理・運用・処分する権限。身上監護権はない 財産管理・法律行為の代理・
身上監護権
財産の積極的運用や処分 信託契約に基づいて、委託者が希望したとおりに財産の運用や処分ができる。 原則できない。
自宅不動産の売却 信託にその旨の定めがあれば、できる。 家庭裁判所の許可が必要。
振り込め詐欺や悪徳商法への対応 信託財産には影響は及ばない。 任意後見人には取消権がないため、本人が締結した契約を取り消すことはできない。

2.親亡き後問題に対処する

今は親が元気なので、障がいを持つ子の面倒をみることができるが、親の判断能力が低下したり、死亡した場合に、残された子の面倒を誰がみるのか、親の死亡後は、親の遺産で子の生活を保障したいが、子には財産を管理する能力がないため、誰が子を支援するのか。いわゆる「親亡き後問題」と呼ばれるもので、家族介護者の高齢化が顕著になるにつれ、親亡き後の子の自立生活をどのように支援し、安全な生活基盤を確保するかが、障がいを抱える子をもつ家族の切実なる問題として顕在化してきています。こうした問題に対処する一つの有効な手段として、福祉型信託の活用が考えられます。
Aさん一家を例に具体的にみていきましょう。


Case 29 残された障がいを持つ子の生活を保障したい場合

Aさん一家  高齢のAさんには、妻Bさん、そして障がいをもつ長男Cさん、次男Dさんがいます。
 最近、物忘れをすることが増えたAさんは、将来自分の判断応力が低下し、または死亡
 することにより、自分や妻の老後や、障がいを抱える長男の生活について不安を抱くよ
 うになりました。


【従来の解決策 負担付遺贈】

これまで、親亡き後、あるいは配偶者亡き後問題の解決策として、負担付遺贈が用いられてきました(Aさん自身の認知症対策としては、別途任意後見契約が必要になります)。例えば本ケースの場合、次男Dさんに財産の全てを相続させる代わりに、妻Bさん、長男Cさんの世話をする義務を負わせる旨の遺言(負担付遺贈)を残すことが考えられます。しかし、負担付遺贈の場合には、受遺者であるCさんがBさん、Dさんの扶養義務を果たさない危険性があり、また、受遺者は承継した遺産を自由に使うことができるため、これを散逸させてしまったり、あるいはその後の経済状況の悪化等により受遺者自身が破産してしまった場合には、履行すべき義務を果たせなくなってしまう危険性も否定できません。さらに、遺贈は自由に放棄することができる上、適切に義務の負担がなされているかどうかを監督する法的機関も存しないため、受遺者の良心に委ねざるをえない部分が少なくはなく、Aさんの抱く将来不安を完全には払拭しきれないのが実情です。そこで、負担付遺贈に代わり、親亡き後、配偶者亡き後の生活保障を確保できる確制度として民事信託が注目を集めています。

【民事信託の活用】

解決策委託者兼第1受益者をA、第2受益者をB、第3受益者をCとし、受託者を次男のD、信託財産を自宅不動産と預貯金の一部として信託契約を設定し、自己の認知症対策から、高齢配偶者、および障がいを持つ子の生活保障までまとめて解決できる仕組みを作ります。この際、Cの権利を守るため受益者代理人に司法書士Eを指定し、Aの認知症発症または死亡を要件として権限が発動するよう設定しておきます。また、Aが認知症を発症した場合に備えて、司法書士Eとの間で任意後見契約を結んでおきます。さらに、残余財産の帰属権利者としてDを指定しておけば、最終的にAの財産をDが取得することになります。

親あと亡き問題に対処する民事信託の仕組み

Aさんに、自身の認知症に備えるニーズがない場合には、遺言で信託を設定することも可能です。この場合、委託者をA、第1受益者を妻B、第2受益者を子C、受託者をD、受益者代理人を司法書士Eとして公正証書遺言を作成します。 もっとも、生前に委託者であるAさん自身が受託者Dさんの仕事ぶりをチェックし、受託者としての適性を見極めることは残されたCさんの生活保障をより確実なものとする意味でも必要です。 そこで、特段の事情がない限り、遺言ではなく、Aさんの生前に信託の効力を発生させ、必要があればDさんを解任し、新たに受託者を選任できる余地を残しておけるよう信託契約を締結する方法をおススメしています。

【信託設定の留意点】

①本件のように、数次にわたって受益者を指定する場合は、兄弟姉妹を除く他の相続人の遺留分に配慮する必要があります(この点については、「資産承継型信託」で詳述しますので、それを参照してください)。
②信託期間が長期に及ぶ場合、受託者の死亡や病気などで任務遂行が不能となる事態に備えて,信託設定時にあらかじめ次の受託者を決めておくことが必要です。この点、新受託者の指定がなくとも、委託者と受託者との合意により新たに受託者を選任することは可能ですが、信頼できる受託者をすぐに探し出すことは難しく、また受託者を欠いたまま、新受託者が就任しない状態が1年間続けば、信託自体が終了してしまう危険があります。こうした事態を回避し、円滑に信託を継続させる上でも、前もって次受託者を選任しておくことをお勧めします。

【税 務】

・信託設定時:課税されません。
・A→Bへ受益権移転時:相続税が課税されます。  
※配偶者の税額軽減を受けることが出来ますので、1億6000万円、もしくは法定相続分の金額のいずれか大きいほうの金額までであれば相続税はかかりません。
・B→C受益権移転時:相続税が課税されます。
・信託終了時:Dに相続税が課税されます。


3.おひとりさまの老後設計

晩婚化や未婚化、少子化に加え超高齢化が加速する現代社会。ひとり暮らしの高齢者の数は約480万人、65歳以上の男性の10人に1人、女性の5人に1人がおひとりさまという実状。団塊の世代が後期高齢者に入る2035年には、ひとり暮らしの高齢者の数は700万人を超えるとの推計もあり、本格的な「おひとりさまの時代」が到来しました。  
人生のエピローグを迎えるおひとりさまにとって、葬儀や遺品整理、諸々の手続き等、死後の事務処理を誰が、どのように行うかは大きな関心事の一つとなります。 信託を活用すれば、生前の財産管理から死後事務、さらにはその後の資産承継まで、まとめて設計でき、かつ任意後見制度と併用利用すれば、老後の生活の安全性をより強化させることができます。 最期まで自分らしく、快適に暮すためのセーフティネットとして信託の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。


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